家を計画する上で必要となる作業として、土地評価、コスト計画、間取り、構造計画、設備計画等々が挙げられます。それぞれの作業をひとつの家に収斂させることが「計画」であり、その技術をもってはじめて住宅は建つものといえます。個別に考えられがちなものを相互に関係させ、取りまとめることが「計画」においてなされます。
例えば、免震住宅を造ろうとした場合、コスト、工法、間取り・プラン、全体の構造、意匠、といった事柄を総合的に計画することによって、ひとつのものが出来上がります。
家造りの技術とは、広義においては計画の技術であるといえますが、ここでは、狭義における技術、建築・構造についてご紹介していきます。




建築の構造とは、ここでは建築を支持する躯体-メインストラクチャア-をいいます。
現在、住宅ではいくつかの建築構造が採用されています。
構造材料での分類では、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、それらをを組み合わせた混構造などがあります。
木造の構造形式では軸組工法(在来)、枠組壁工法(2×4)、木骨ラーメン工法(SE工法)などが一般的です。それぞれの構造形式には特徴があり長・短所があるので、コスト、空間構成、立地条件、環境などをトータルに判断して適したものを採用することになります。戸建住宅の場合、コストの面などから軸組工法を採用することが多いようです。軸組工法は材料流通や技術面で、こなれた工法なので、多くの事例を共有できるという点からも有用な工法といえます。とはいえ、あくまでも諸条件を判断して建築の構造を決めるという私たちのルールには変わりありません。開放的な空間を造るなら鉄骨造やSE工法をまず検討していきます。建築構造においては、その形式・工法の選択自体がデザインの重要な作業のひとつであるといえます。




以前は、一戸建ての家の建設では地耐力試験はほとんど行われていませんでしたが、敷地の地耐力の把握はとても重要なことです。特に地盤が悪いわけでなくても建物が不動沈下を起こしているケースが少なからず見られるのは、地盤の地耐力試験を行わなかったためです。
河川の近くは地盤が悪いところが多く、地耐力が1〜2t/u程度のところが少なくありません。地盤調査の前段で、周辺地域の地質図や古地図などでマクロに地盤の状況を把握し、加えてSS試験や表面波探査法によって地盤データを取ります。計画建物の加重に対して地耐力が足りなかったり、下部地層の不均一や新しい盛土が確認されたら地盤改良を検討しなければなりません。地盤改良にはセメント系固化剤を地盤に攪拌する表層改良や、ある程度の深さを改良するためのソイルセメント柱状改良などがあります。これらの選択は計画建物、地耐力、改良深度によって判断されます。

安心して暮らすための家造りは地盤調査から始まります。



地震国日本での住まいを考えるとき、耐震性を常に念頭に置くのは当然のことです。私たちは阪神淡路大震災や新潟県中越地震を悲劇として経験するだけではなく、教訓として受け止めます。家が人を殺すという事実を建築にたずさわる者たちが真摯に受けとめ、その意識を共有することによって、技術は前進するものです。大きな被害を出した阪神淡路大震災は多くのデータをもたらし、その検証は今も続いています。
わが国の耐震・構造基準は年ごとに検証、改正されています。その時点で最新・最良とされる構造、工法を採用し、構造計画を立てることが私たちのルールです。

                     


最近聞かれることの多い免震の技術はわが国では20年程の歴史があります。現在の免震構造の目的はメインストラクチャアの耐震性に加え、内部の家具などによる二次災害、揺れに対する不安感、不快感の軽減にあります。
免震構造とは、地盤・基礎構造と上部構造とを構造的に分離し、その間に免震層を設けて地震動が上部構造に伝わり難くくするものです。その構成の装置は、支承、限界変形ストッパー、減衰装置、復元機構などのシステムによります。

私たちはこの工法のメリットのひとつに上部構造の自由度が増すところにあると考えます。コスト面でまだ課題のある工法ですが、有用なものであることに間違いはありません。





構造のお話をしてきましたが、それらはあくまで家を造るベースの技術論であって、加えて総合的に計画、デザインがされてはじめて良い家が出来上がります。

機能美という言葉があります。人工物、自然物を問わずあらゆるモノの中に発現されるこの美しさは、古くから、設計家・棟梁達によって建築においても得られるべきものとして掲げられてきました。

一般的に機能美とは、ある目的のための働きのさまに感じる美しさのことを言います。飛行機や、日本刀、よく鍛錬されたスポーツ選手の肉体や、樹木など。機能のためだけに存在する部位の集合体、たとえば機械の機関部などは美しさを目的に造られてはいなくても人に美しいと感じさせるものです。

建築においての機能美とは、柱や壁、屋根などの構造体や、建築のパーツである窓、階段などの細部をあらわにして建築の成り立ちそのものを表現することによって立ち現れるものとして捉えられてきたようです。構造躯体としてあらわされた鉄骨階段などは身近に見られる構造美のひとつです。また古くは寺院などの和洋構造の大小無数の材を複雑に組み上げ、季節による乾燥、湿り、重力を受けつづけ建物を支えるディテールの美くしさは機能美といえるかもしれません。
また、部分的なディテールの機能美だけではなく、平面計画において、無駄なく合理的に複雑な要求条件をクリアしているプランに美を感じることもあります。

どうやら、見られるための操作・装飾ではない、実質と思しきものの中に私たちはある美しさを見出すようです。
表層の綺麗さとは別の何ものかに触れた時に感じる好ましさ。それに通じるものが、機能美といえるのかもしれません。

家における美しさとは。
それは、生活の美しさです。住まい手により、良く住まわれる家であること。それは住まい手が担うものです。
良く住まうこと。これが第一です。
そして、ものとして、場としての家が担うのは、そこに住まう人に対し、奉仕し、守り、癒し、時に対峙すること。
そして、その姿においての美しさ、心地よさ。そのための多くの機能をもって成るものが家なのです。
姿において美しい空間とは、表層の「化粧」の問題です。空間の配列の操作による平面構成の面白みの創作も、「化粧」です。
そうであっても住宅には必要な機能であり、それは今日の多くの家ではおざなりにされてしまっているものです。
家をデザインすることとは、住まい手による生活と家のこれらの諸機能とをひとつにし、実質のある美しさに近づけることであると私たちは考えます。




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